ご存じですか?日本語で「物語」と訳される英単語は複数あり、それぞれに意味が違います。

Taleのイメージ画像

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いろいろな「物語」

具体的には「story」「narrative」「tale」「fable」などがあります。英英辞書(Cambridge Dictionary)によると、以下のような説明があります。
誤解を恐れずに一言にまとめると、「story:お話」「narrative:話し手視点のお話」「tale:作り話」「fable:寓話」になりそうです。

単語辞書私の意訳
Story 真実であれ想像であれ、一連のつながった出来事の描写
 新聞やニュース放送で報道された出来事
 うそ
お話
Narrative 物語や一連の出来事の描写
 出来事の特定の説明または理解方法
話し手視点のお話
Tale 作り話、特に信じがたい話作り話
Fable 一般的な真実を語る、あるいは事実に部分的に基づいているにすぎない短編小説、またはこの種の文学
 道徳的真実を語る短編小説で、しばしば動物が登場人物として使われる
寓話
いろいろな「物語」

なぜ急にこのようなお話をしているのか。
答練の採点をしていて与件の内容を変えている受講生が多いと感じたからです。与件文のStoryを把握する際に、受講生の頭の中でNarrativeやTaleに変換しているのだと思います。

Storyを変換すると内容が変わる

実際の例ではありませんが、Storyを変換しているイメージ例を以下に示します。

与件文のStory答案から見える受講生のNarrativeやTale
現場がカンで作業している。<Narrative>
現場がカンで作業をしている。これは大きな問題であり改善すべきことである。
<Tale>
現場が適当に作業している。
物語が変換されるイメージ例

StoryをNarrativeやTaleに変換すると、得点できなくなります。その理由は以下と思います。

Narrativeに変換する弊害

  • 情報を主観的に解釈してしまった結果、答案の方向性が偏る。
    • カンで作業していると必ずばらつくのでしょうか?生産管理のテキストなどでは、一般論としてそのような記述はあるかもしれません。しかし、熟練した技術者が最新の加工機械よりも高精度で加工できることもあります。与件文中に他の情報がなければ、カンで作業することと作業ばらつきに因果関係はないかもしれません。
    • テキストから得た知識に引っ張られてすぎているのかもしれませんが、与件文のStoryを話し手視点のお話(Narrative)に変換すると事例の内容が変わってしまいます。そして、そこから導き出された答案は、本来答えるべき内容からズレたものになってしまいます。

Taleに変換する弊害

  • 言葉を変えた結果、意味が変わってしまう。
    • 傾聴するときに相手の発した言葉を引用して伝え返すことを「オウム返し」と言います。オウム返しの時に相手の発した言葉を使うことによって、「今の話、受け止めましたよ」と言うニュアンスを伝えることができ、ラポールを強化することができます。
      傾聴の際に、聞き手は新しい単語を場に持ち込まないことが基本です。単語を変えてしまうと、相手は話を聞いていないように感じるためにラポール形成が難しくなります。
    • 人が単語に込める意味やニュアンスはあなたと同じとは限りません。与件文に出ている単語を変えることで意味までも変わってしまった結果、採点者に「この人は事例の内容がわかっていないのではないか」と思われてしまうのです。

まとめ

今回は筆記試験に関するお話ですが、通常の会話でも、過度に主観的な解釈を行ったり、「要するに~」といって不用意に言葉を変えたりするとコミュニケーションが取れなくなります。気を付けたいものですね。

さて、月末はいよいよ二次試験ですね。今回の記事が受験を予定している方にとって何かの気づきにつながればうれしいです。
体調を崩しやすい季節ですので、くれぐれもご自愛くださいませ。