先日、事業継続マネジメントシステムの規格解説セミナーに登壇させていただきました。事業継続マネジメントシステム(ISO22301)は、BCPを策定・維持・向上する仕組みとなります。

BCP=大規模災害対策?

BCPというと大規模災害対策をイメージしがちですが、もっと小さな要因でも事業が止まることがあります。今回の参加者からは、「有害物質が混入した原料が納入されることによる製造ライン停止」が挙げられました。メーカーで混入原因の調査と対策が取られて良品が納入されるまで、長い間ラインが止まることになるためです。

ISO22301セミナーテキスト

ISO9001との違い

このような事例はISO9001の場合は不適合(原料の品質要求事項外れ)の仕組みで対応することが多いと思います。しかし、ISO9001の仕組みの中ではメーカーに対する是正要求に留まりがちです。

一方、ISO22301では流れが少し異なり、以下のような流れとなります。

  1. 事業影響分析により優先事業活動(重要顧客向けの主力製品、など)を決める。
  2. 優先事業活動が要求する資源の中断・疎外のリスクを特定。
  3. リスクの分析・評価実施。
  4. 対応を必要とするリスクを決定。
  5. 事業継続戦略と具体策の特定、選択。

「有害物質の混入」は2.項に相当します。そしてリスク分析の結果、リスクが高いと評価されれば、対応を必要とするリスクとなります。

その場合、想定されるリスク低減措置にはメーカーに是正要求する以外にも考えられます。
例えば、以下のようなものです。

  • メーカー切り替え
  • 複数購買
  • 在庫拡充(メーカー、自社)
  • 検査の強化(メーカー、自社)
  • 精製・除去・無害化工程の準備

まとめ

いかがですか?ISO9001の仕組みよりも高いレイヤーで対策を検討できているのではないでしょうか?

ISO9001の仕組みでも同様なことはできますが、難しい点もあります。例えば、クレーム対応の仕組みでは“有効性のレビュー”を内部監査で行うことが多いです。そのため、短期間(1年以内)でできる対策に留まる傾向があり、複数年にまたがる是正計画は立てにくいです。また、不適合の当事者と品質保証部門だけで対応することが多く、部門横断的な活動は難しいです。

BCPは災害対策と思われがちですが、事業が中断するリスクは災害だけではありません。「会社に起こってもらっては困ること」という視点で、改めて検討してみませんか?
弊オフィスでは、BCP策定やBCMSの体制づくりのお手伝いも致します。