前回は、講義を提供する側に起こったことをお伝えしました。一方、講義・授業を受ける側には何が起こったのでしょうか。
今回は、オンライン受講の課題についてお話ししようと思います。
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受講生にとってのメリット
オンラインセミナーも回数を重ねることで、そのメリットも知られるようになりました。
例えば、以下のようなものです。
- PCとネットワーク環境があれば教室(現地)に行かなくても受講できる
- 移動時間がかからないことから、業務時間を削らずに済む
- 在宅勤務中でも受講可能
オンラインセミナーのデメリット
これらは一見、良いことばかりのようです。しかし、マイナスの影響も引き起こしているように感じています。
私の体験した例をいくつかご紹介します。
受講には適さない環境
とある大学でオンライン講義に登壇する機会がありました。出席している学生は、全員がカメラオフ&マイクミュートでした。
このことは、オンラインの講義やセミナーでは珍しいことではありません。講師側が生徒の反応がわからないので苦慮する程度でしょうか。
ところが、講義の途中で学生に発言を求めた時に、面白い事象が発生しました。
自分が発現する時にはミュートを解除することになります。当たり前ですが、その際にマイクは周囲の環境の音も拾います。
講義中に教授から発言を求められたある学生は、パチンコ屋と思われる場所で授業を受けていました。また別の学生は部屋で友人と一緒にいるらしく、講義とは関係のない会話と笑い声が聞こえてきました。
受講生がどのような環境で受講しているかうかがい知れないというのは、オンライン受講の課題の一つと思われます。
理解度が低くなる恐れ
テレワークにより通勤のための移動時間が減り、その時間を利用して資格の勉強をする方が増えています。
先日、中小企業診断士試験の公開模擬試験の採点を担当させていただきました。私が担当した答案数は昨年より2割以上増えている一方、平均点は昨年を大きく下回っていました。
問題の難易度の差もあるので一概に比較することはできません。しかし、答案作成のレベルが下がっているように感じました。
特に、今年の受験生の多くが中小企業診断士の本試験の“お作法”ができていません。例えば「英数字は1マスに2文字入れる」「行末の句読点は行末のマスの中に入れる」などです。
また、与件文中の同じ情報は複数の設問に使わないのが通例です。しかし、同じ情報を複数の設問に使ってしまい、回答の方向性がずれてしまう例も多く見受けられました。
補足説明のような内容が伝わりにくいのかもしれません。また、各自の都合で動画を視聴するような講義では受講生同士でグループワークをするのが難しくなることも考えられます。これもオンライン受講の課題になりそうです。
教室という”場”の効果がなくなる
緊急事態宣言が解除されたことから、久しぶりにオフラインで小学校の授業参観がありました。そこには、自宅学習の時には見たことがないほど授業に集中している自分の子供の顔がありました。
これにはさまざまな理由はあるのでしょうが、私が強く感じたのは、同じ目的を共有する人が集まるという“場”の効果です。「学校に行くことは勉強をしに行くこと」「教室は勉強をする場」だと認識し、それ以外のことを考える余地を極力排除することで授業に集中するのだと思いました。まるで、競走馬のブリンカーのようなイメージですけどね。
家という場では、家族は家事をしていたり、小さい兄弟は別のことをしていたりします。従って、オンラインで自宅学習する場合は、自分の勉強に集中しにくいようです。また上の子からは、下の子の勉強は「簡単なことをしている≒遊んでいる」と見えるようです。そして「私は勉強しているのに弟妹は遊んでいてずるい」という感情が芽生えます。そして「ずるい」という感情が頭の中で渦巻いていき、これがさらに集中を阻害しているように思われます。
次回は、オンラインセミナーの今後について予想してみます。