10年ほど前から、人とのコミュニケーションについて考えさせられることが増えてきました。
私の話は、同じ言語を使う相手に、なぜ届かないのか。理論的に正しいはずの意見なのに、なぜ反発されるのか。なぜ会議ではレコーダーから再生しているように、同じ会話が続くのか。などなど
サラリーマンを離れて個人でお仕事を始めた頃、縁あって「U理論」に出会ったことをきっかけに、少しずつその理由が見えてきました。
人はみな自分の中の世界を持ち、その中で生きていること。”中の世界”はその人の過去の経験から形作られていること。人の判断・認識・意思決定などは、過去の経験をもとに無意識で行われることが多いこと。自分が認識している”自分”と、他の人から見えている”自分”がずいぶん異なること。などなど
そんな探求をしている中で出会ったものの一つにNVC(Nonviolent Communication)があります。本書「NVC 人と人との関係に命を吹き込む法」はその全体像を示したものです。どういうコミュニケーションをすれば、人が本来持っていながら、ともすると忘れてしまっている「他の人を思いやろうとする気持ち」を引き出せるか。NVCはその方法をまとめたものとなります。
NVCのプロセスは(表面上は)とても簡単で、以下の4つの要素になります。
1.状況を観察する
2.観察したときに自分がどう感じるか述べる
3.自分が何を必要としているからそのような感情が生み出されるのかを明確にする
4.リクエストする
ところがこれが難しい。
状況を素直に観察できず、道徳的な観念や比較などにより分析・評価したり、感情を表現しきれなかったり、リクエストと強要を混同したり、などなど。
でも、まがいなりにもプロセスを意識してコミュニケーションをしてみると、相手の反応がずいぶん違います。夏休みのため子供の対応にイライラしがちな奥さんにかわり、「ゲームがやりたくて宿題をやろうとしない上の子」、「お風呂に入りたくないと駄々をこねている下の子」に使ってみましたが、”怒ってやらせる”よりもはるかに低いストレスで、お互いに合意できます。仕事面では、ファシリテーションを行う際にも有効でした。
また、このプロセスは自分自身にも使うことができます。例えば自分が怒りにかまけてしまうと、他人とのプロセスがまったく働かなくなるので、一呼吸おいて目先の怒りを鎮め、自分自身に対して「なぜ自分は怒っているのか、怒っている自分は何を欲しているのか」を追求していく必要があります。ここが一番難しいかもしれません。
「あの人たちの怒りや強い態度の裏側にはどんなニーズがあるんだろう」と思うと、他人を見る目が変わってきます。奥が深い分野ですが、もっと理解を深めようと思っています。