2018/3/16に、情報機構様が主催する掲題のセミナーに登壇しました。
周囲の方をお誘いしても、「超ニッチな内容だね、ははは」といなされるような内容のセミナーでしたが、7名もの方に参加いただきました。
参加されたみなさん、本当にありがとうございました。
化学物質に対する風当たりが、最近また強まっています。公害病や薬害などが社会問題になったころにも風当たりが強い時がありましたが、その後の規制強化などにより一定の安全性を確保してからは、少し下火になっていたように思います。
最近になって、今度は生体や環境中への微量残留濃度が測定できるようになったり、元素記号としては既知だが、大きさが変わることにより物性が変わるナノ物質を作成する技術が確立されたりするなど、新たな化学物質の影響が分かってきたことから問題視されるようになってきたのです。ここから「安全性のわからないものは使わない」という流れになってきました。
欧州は基本的に各国が地続きです。川が国を跨いで流れ、大気や河川の汚染が国を跨いで影響を及ぼすことから、環境問題に対する意識が高い地域の一つです。また”EU”という、国を跨いでコンセンサスを形成するプロセスを持っていることから、ここで合意形成されたことは他の地域にも影響を与える力があります。「安全性のわからないものは使わない」という意思は、次第に世界に対して影響を与えていくのです。
例えば化学物質規制で有名な欧州のREACHという制度は、その後中国、韓国、台湾といった国々に展開されています。もともと化審法を持ち、この分野では進んでいたはずの日本でさえ、今の化審法は”J-REACH”と称されるなど、影響を感じさせます。
欧州発の規制は、次第に世界に展開されるのです。これは裏を返すと、欧州の規制動向をウォッチしていれば、世界のその後の規制動向が予想できるということです。
一方、日本企業にとっては、欧州に直接輸出していないからといって、無関係ではいられません。「世界の工場」と称される中国は、欧州を重要な顧客と位置付けています。同じ製品を「欧州向け」「北米向け」などと作り分けることは、経済合理性から考えにくいですね。材料や部品に求める仕様は各国・各顧客などの共通部分になります。すなわち、日本企業に対して欧州規格への適合を求めてくることになるのです。
突然「欧州の規格が変わり、貴社の製品は使えなくなった」と言われることは、企業にとって大きなリスクと思います。欧州の規制をウォッチして将来の事業リスクに備えましょう。